澄蓮 初めまして、私の名前は赤崎澄蓮といいます。今からする嘘のようなお話は、
私がアルバイトをしていた、ちょっとレトロな雰囲気のレストラン『樹』が、
アイドルカフェとなってしまうお話です
おしゃれな音楽が流れる店内
SE:ドアベルが鳴る
澄蓮 ありがとうございました~
茉莉ちゃん、お客さんも落ち着いたしクローズしちゃうね。
茉莉 ありがとう、澄蓮。あっ、凛姉ぇはそのまま居ていいから。
凛子 いつも助かるわ~
澄蓮 凛子さん、原稿の進み具合はどうですか?
凛子 順調よ~この店みたいに長居しても怒られない、
黙ってても美味しいご飯が出てくる。
これ以上、私みたいな物書きにはありがたい場所はないわ~
澄蓮 どういたしまして 。
大樹 いいな、お前は。順調そうで
凛子 あら、どうしたの大樹。あっ!さては試作品でも失敗した?
なんなら味見してあげようか?
大樹 違う。
凛子 じゃあなに?
大樹 赤字なんだよ
凛子 あらら……
茉莉 今日も届かなかった?
大樹 あぁ、このままだと店開けるだけ損が出ちまう。
凛子 家賃なら待つわよ?
大樹 うっ……助かる。
凛子 私も作業場がなくなると困るしね~
澄蓮 大樹さん、そんなにまずいんですか?
それなりにはお客さんも来てくれたと思ってたんですが……
大樹 常連さんは来てくれるんだけどな。
やっぱり駅ビルにチェーンの飯屋が入ったのは痛いな。
酒屋の犬塚は喜んでたけどな、顧客が増えたって。
凛子 この店はちょっと駅から離れてるからねぇ~、となると新しい客層が必要ね~
大樹 簡単に言うなって。それができれば困らない
凛子 それもそうね
大樹 だから、景気の良さそうなお前が羨ましいな、と思ってな。
凛子 まぁまぁ、多少は売上に貢献するからなんかご飯作ってよ。
茉莉 私もお腹減った
大樹 そうだな、飯にするか。って言っても余ってる食材だと……今日はオムライスかな?
凛子 いいね~!!
澄蓮 大樹さんのオムライス好きです
茉莉 お兄ちゃんはオムライスだけは作るの上手いからね
大樹 だけってなんだ、だけって。
茉莉 褒めてるでしょ?ほら、早く作った、作った。
大樹 ったく。じゃ、ちょっと待ってろ。
あっ、柚貴が来るから、来たら待っててもらってくれ
茉莉 ユウ兄ぃが?なんで?
大樹 またケーキ焼いたからお裾分けだってさ。
茉莉 ユウ兄ぃ、なんでそんなに女子力高いんだろ?
たまに本当に男なのか疑問に思うんだけど。
凛子 柚くんに女子力で勝てる子なんて、そうそう居ないでしょ?
女の子より女の子してるんだから。
茉莉 確かに……
凛子 前途多難ねェ~茉莉ちゃんは
茉莉 どういう意味?
凛子 さぁ~
大樹 さぁ~て、俺は飯でも作ってくるか。
澄蓮 私も今のうちに明日の準備しておきますね~
大樹 ありがとう澄ちゃん。
茉莉 そんなのお兄ちゃんにやらして、着替えてきちゃいなよ。
澄蓮 でもすぐ終わるし、その方が明日楽でしょ?ササっとやってくるよ。
凛子 澄ちゃんはいい子だねぇ~
大樹 お礼にオムライス大盛りにしとくよ
澄蓮 それは、ちょっと……
大樹 腹減ってないか?
澄蓮 そういうわけでは、ないんですけど……
茉莉 お兄ちゃん、デリカシーなさすぎ。
大樹 なんでだ?
茉莉 あぁ~もういいから、ご飯作りに行った、行った。
大樹 わかった、わかった。
茉莉 まったく、鈍いんだから。
澄蓮 あはは……ありがとう、茉莉ちゃん。
茉莉 ごめんね、鈍いお兄ちゃんで。
SE:ドアベル
柚貴 こんばんわ~大樹くん居る?
茉莉 ユウ兄ぃ、いらっしゃい。
澄蓮 柚貴さん、こんばんわ
凛子 噂をすれば、ね
柚貴 茉莉ちゃん、澄蓮ちゃん、こんばんわ~凛ちゃん、噂ってなに?
凛子 気にしないで、こっちの話。
柚貴 内緒話かな?あっ、コレ今日焼いたケーキだから、みんなで食べて。
凛子 やったぁ~夕飯のデザートができた!!中身は何でしょう?
茉莉 凛姉ぇ、意地汚いことしないでよ、まったく。ユウ兄ぃいつもありがとう。
うわ、ザッハトルテとかまた本格的なの作ってきたのね。
柚貴 慣れればそうでもないよ?
茉莉 そう、なの?
柚貴 うん
澄蓮 今度私にも作り方教えてください!!
柚貴 勿論!!そうだ、今度みんなで作ろうよ。
凛子 私は味見役で~
柚貴 失敗しても文句言わないでね。
大樹 おう柚貴、来たか。調度まかない作ってるから食って行ってくれ。
柚貴 いいの?
大樹 オムライスだが、いいか?
柚貴 大樹くんのオムライス久しぶり
凛子 あれ?売上悪いんじゃないの~?
柚貴 え?そうなの?なら僕の分はいいよ
大樹 いいって。ケーキの礼だ。食ってくれ。
茉莉 お兄ちゃん、ユウ兄ぃが焼いてくれたケーキ冷蔵庫入れとくね
大樹 おう、飯の後でみんなでもらおう。さて、こっちも仕上げちまうか。
茉莉、ついでに持ってってくれ。
茉莉 はいはい。
澄蓮 明日の準備終わらしちゃいますね!!
凛子 私も一区切り付けてご飯の準備にしましょうかねぇ~
柚貴 凛ちゃん、お仕事の方は順調?
凛子 まぁ~ねぇ~ここでやると、進むのよねぇ~
柚貴 サボれないからね
茉莉 お待たせ~~はい、お兄ちゃん特製のオムライスでございます。
凛姉ぇのはデミグラスソースの方で、ユウ兄ぃのはケチャップね。
凛子 待ってました~美味しそう~
茉莉 澄蓮もそこまでにして食べよう
澄蓮 はぁ~い。今行くね。
凛子 これこれ~♪ん~美味しそう~な匂い~♪いただきます~
柚貴 あれ?凛ちゃんのはケチャップじゃないんだね。
大樹 コイツのは特別なんだよ。
柚貴と澄ちゃんのはシンプルな半熟卵にケチャップのオムライス。
しっかり味のケチャップライスに、半熟卵のとろっとした食感を楽しむタイプ。
んで、茉莉のは薄焼き卵にデミグラスソースのオムライス。
ソースが濃い味だから、ケチャップライスと卵は薄味にして
デミグラスソースの味を楽しむタイプ。
柚貴 へぇ~色々有るんだね。
大樹 好みに合わせてな。んで、コイツのは全部がこってりのヘビーオムライス。
柚貴 あぁ~凛ちゃんらしいね……
茉莉 いつも思うんだけど、舌が疲れないの?
凛子 これがいいんじゃない~
私の仕事ってカロリー消費が激しいから、コレくらい補充しないと足りないの。
大樹 お前、動いてないじゃん
凛子 頭脳労働
柚貴 頭脳労働でカロリーって消費するっけ?
凛子 するする!!
茉莉 現にコレだけ食べてても体系変わってないから本当、不思議
澄蓮 お待たせしました。あぁ~美味しそう
大樹 澄ちゃんも座って、飯にしよう。
澄蓮 はい、いただきます。……うん、この変わらない味が大好きです。
でもお店がなくなっちゃうと、このオムライスも食べれなくなっちゃうんですよね。
柚貴 え?お店やめちゃうの!?
大樹 すぐってわけじゃないが、今のままだと店開けるだけ赤字が出ちまうんだ
柚貴 そうなんだ……やっぱり駅ビルの影響?
大樹 まぁな。
茉莉 ユウ兄ぃが来るまでも、なんとかできないかなって話してたんだけど…
澄蓮 いいアイディアもなくて
柚貴 そうだったんだ、大樹くんのご飯、こんなに美味しいのにね
凛子 そう!!大樹のご飯はなかなか美味い!!でもお客さんにこの味が広まってないのよ。
なら、広めればいいと思わない?
大樹 お前、またなんか企んでるだろう?
凛子 企んでるとは失礼ね!!素晴らしいアイディアを提供しようっていうんじゃない
澄蓮 何かアイディアがあるんですか?
凛子 簡単~客を呼べる店員が居ればいいのよ!!
大樹 あのなぁ~そんな店員、雇う金はないぞ?
凛子 居ないなら、作ればいいのよ!!
茉莉 作るって……
凛子 ちょ~ど、今やってる企画でネットアイドルを作ろうと思っててね~
本当にいいタイミングだったわ~
澄蓮 ネットアイドル……ですか?
凛子 そっ!!ここに居るみんなでネットアイドルグループをやるのよ!!
1人は元アイドルの子にアテがあるから、
ここに居る4人と合わせて、5人グループ『ユグドラシル』を!!
茉莉 私はやらないわよ、そんなの!!
凛子 えぇ~人気カフェブロガー、珈琲探検家のマ・リ・ちゃんと
会いたいってファンも多いんじゃない?
茉莉 なっ!!なんでそれを!!
凛子 資料探ししてたら、たまたまね~確か『カカオの香りを……
茉莉 分った、わかったから!!ちょっと黙って、凛姉ェ!!
大樹 お前そんなことしてたのか
茉莉 うるさい!!
澄蓮 あの~凛子さん。それ、私も入ってるんですか?
凛子 勿論!!
澄蓮 む、無理ですよ~!!!
凛子 澄ちゃん可愛いから、大丈夫って!!
柚貴 ね、ねぇ凛ちゃん…さっき4人って言わなかった?
凛子 勿論、付き合ってくれるよね?男の娘配信者の柚ちゃん
柚貴 あぁ、それ、知ってるんだね……
凛子 あれだけ人気があれば、この私が知らない訳ないでしょ?
配信、いつも見てるわよ~ROMだけど
柚貴 配信まで見てるんだ……わかった。頑張るよ
大樹 お前、それ脅迫なんじゃないのか?
凛子 えぇ~なんのことかしら~?
柚貴 あっ、大樹君……ごめんね、今まで黙ってて。その、気持ち、悪いよね?
大樹 ん?何がだ?
柚貴 ほら、男の娘だし……
大樹 良いんじゃないか?柚貴が好きでやってるんだろ?
なら、俺が口出すことじゃないしな。
柚貴 大樹君…ありがとう。僕、嬉しいよ
澄連 大樹さん、さすがです!
そのくらいじゃ、お二人の友情には何も影響を及ぼさないんですね!
凛子 あれはたぶん、分ってないだけだと思うわよ
茉莉 ちょ、ちょっと!!2人で変なムード作らないでよ!
大樹 そんなことより、そのネットアイドル?ってのをやるとして、本当に客がくるのか?
凛子 そこは任せて!!この超絶人気、美女作家の凛子様が
バッチリプロデュースしてあげるから!!
茉莉 自分で超絶人気とかって言っちゃうのね…
凛子 いいわねぇ!!そういうツッコミ!!
その調子で、私と一緒にネットアイドルグループをやるわよ!!
大樹 アイドルグループ、ねぇ……
茉莉 あぁぁ~もう、なんで私がこんなこと
澄蓮 茉莉ちゃん、それは私のセリフだよ~~
柚貴 いいのかなぁ~僕がアイドルやっちゃって……
大樹 みんな、諦めろ。コイツが言い出したら止まらないのは知ってるだろ?
茉莉 うっ!!
澄蓮 あぁ……
柚貴 そう、だったね
凛子 みんな覚悟が決まったようね!
大樹 んで、そのネットアイドルをやるとして、本当にそれぐらいで、
このボロい店に客がくるのか?
凛子 そこは勿論、改装しますよ!!
大樹 だから、そんな金、ウチには……
凛子 大~丈~夫!!実はいいタイミングで、知り合いのメイド喫茶が
閉まることになってねぇ~
お店の椅子やら何やらを貰ったのよ~
大樹 そんなもん、貰ってどうするつもりだったんだよ
凛子 だから、1人アテがあるって言ったでしょ?その子とお店やるつもりだったのよ!
大樹 ふぅ~ん。だが、その椅子とか机を持ってきても、店の内装が合わないだろ?
凛子 リフォームするに決まってるでしょ?
大樹 その金がウチにはないんだよ
凛子 何言ってるの?私が出すに決まってるでしょ?
大樹 は?
凛子 ついでに言うなら、このお店も私が買い取るから。これからオーナーって言ってね!!
全員 はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!