第10話 葵の真実 後編


大樹 さて、みんな揃ったけど、葵ちゃんは大丈夫なのか?

茉莉 きつそうだったから、私の寝巻きに着替えてもらってベッドで寝てもらってる。

   後で交代で様子見にいくつもり

吉田 お世話をかけます。

茉莉 いいですよ、このくらい。

凛子 じゃ、改めて葵ちゃんの話ね!!

吉田 はい、葵が活動していたユニットは、ウチ以外にも関連事務所と合同で結成された

   アイドルユニットだったんですが、

   そのため、人数もそれなりに多く、ユニット内の競争もありまして

   葵もその中でしのぎを削っておりました。

柚貴 うわぁ~別世界の話ですね。

凛子 私は彼女達の撮影したショートムービーの脚本とかの仕事を貰ってたの。

吉田 その節はお世話になりました。

凛子 いえいえ~

大樹 真面目に働いてたんだな。

凛子 どういう意味?

澄蓮 凛さん、大樹さん。静かにしましょう!!

吉田 話を戻しまして、我々スタッフも色々と試行錯誤をしてきたんですが、

   なかなか厳しい世界でもあるので、

   しだいに観客の動員が減ってきてしまいまして、そんな折ある事件が起きたんです。

富士 『アイ☆ウィッシュ』の事件と言えばアレですね、メンバーの不祥事

茉莉 富士、あんたアイドルなんて興味あったっけ?

富士 興味はない!!だが、話題性の高いモノはチェックしてるんだ!!

茉莉 あっ、そう。で、不祥事って何があったんで……

犬塚 あぁぁぁ!!思い出した!!『アイ☆ウィッシュ』って言えば、

   メンバーの流出画像のアレか!!

   確かあの後、流出しちまった子AVデビューしたんだよな~

大樹 犬塚……

柚貴 犬塚さん……

犬塚 え?あぁっ!!ち、違うんですよユキさん!!!!

   俺はただSNSでそういうニュースを見たってだけで

   別にそういうのが見たいとかじゃなくて、ですね~

茉莉 犬塚さん、サイテー。柚ちゃん、近寄らない方がいいよ。汚れる

犬塚 えぇ!!えぇぇぇ!!

柚貴 あ~あはは……

犬塚 ユキさん~~

凛子 はいはい、犬塚くんが失言してくれたから、何が起こったかはわかったね。

   吉田さん、話の続きをどうぞ

吉田 はい。実はその不祥事を起こしたメンバーが

   あまり良くない人間達と関係があったようで、

   他のメンバーにまで問題が派生してしまいまして、

   その結果『アイ☆ウィッシュ』は多くのメンバーが脱退することに

   人気落ちてしまったんです。

栗田 当時は他にも続々と出てきていたからね

大樹 栗田さんも知ってるんですか?

栗田 僕はアイドルオタでもあるからね!!

   『アイ☆ウィッシュ』以外も推しイッパイあるよ!!

凛子 栗田さんはその筋で有名なのよ~

栗田 そんな有名だなんて!!滑子先生に比べたら大したことないですよ~

大樹 そうなんだ……で、葵ちゃんの話はどうなったんです?

吉田 はい。その後、新メンバー等を追加し、再出発したんですが、

   メンバーが抜けたことにより、

   経験がある子が減ってしまい、がキャプテンとして

   新メンバーの面倒も見ながら頑張っておりました。

澄蓮 葵さんらしいですね。

吉田 ですが、不祥事を起こしたアイドルユニットに世間は厳しく、

   プロモーターやライブ会場も評判を気にして、

   『アイ☆ウィッシュ』を使ってくれなくなってしまったんです。

柚貴 そんな……

吉田 そんな時に最後まで会場を貸していただいたのは栗田さんでした。

茉莉 えぇ!!栗田さん、ライブハウスも持ってるの!?

栗田 いやぁ~たまたまいい物件があったんで居抜きで買ったんですよ。

   あの時はいい買い物しました。

大樹 なぁ、栗田さんって何者なんだ?

凛子 ん?だから私の親衛隊一号さんよ?

大樹 前はファンクラブって言ってたよな?なんかランクアップしてないか?

凛子 親衛隊もあるのよ

大樹 お前も何者だ?

凛子 私は私よ!!

澄蓮 お2人ともお静かに!!吉田さん、どうぞ

吉田 ありがとうございます。ライブに出れないとファンの動員数も減っていき、

   メンバーも一人、また一人と卒業が続き…

   結果最後に残ったのは葵を含めて5人でした。

   それでも葵は『アイ☆ウィッシュ』を愛してました。

   いつか返り咲こうと必死に活動を続け……

柚貴 過労で、倒れちゃった。

吉田 はい。葵は長期休養に、事務所もキャプテン不在ではと

   『アイ☆ウィッシュ』を解散を決定しました。

   葵は今でもそれを自分のせいだと思っているんです。

   あの時、自分が倒れなければ……そんな風に自分を責めて。

澄蓮 そうだったんですね……だからあんな風に。

吉田 はい。葵のファンは『アイ☆ウィッシュ』の頃からの方多いので、

   何よりファンと会える機会を大切にしたいんです。

大樹 だから凛と一緒にカフェをすることになったと。

吉田 はい、滑子先生には『アイ☆ウィッシュ』の頃から

   色々お世話になっておりまして、

   葵がふさぎ込んでいた時も、共通の趣味があったのもあり、

   外に連れ出してくれたり、

   ご自身の関係の作品等の案件をまわしてくれたりと、本当に助かりました。

凛子 それはこっちも葵が必要だっただけです

吉田 その後も、コスプレ写真集等の企画など葵に合わせて色々企画していただき、

   栗田さんにも撮影スタジオをお貸しいただいたりと……

大樹 ここでも栗田さん!!

栗田 いやぁ~お恥ずかしい。

吉田 そのおかげで、今は色々な活動をできるようになり、

   葵自身も充実した活動ができるようになりました

   なので、僕含めてこの喫茶の企画は成功させたいと思っているんです。

柚貴 そう、だったんだ

茉莉 それで恩返しだっただね。

犬塚 (大げさに泣きながら)うぅ……うおぉぉぉ~ん、大変だったんだなぁ~

富士 それでいて、あんなにも凛としているなんて、素晴らしい女性だ!!!

大樹 2人とも、感動が減るからちょっと静かにしてくれ

犬塚 何で!!

富士 理不尽な!!

吉田 これはお願いなんですが、今回のこと葵自身も色々想いを持って参加しています

   私の目が届かないところで無理をするかもしれないので、

   それとなく力になっていただければ助かります。

澄蓮 はい!!分かりました!!

柚貴 体調は気にしておきますね

犬塚 負かして置いてください!!

富士 食事面でのサポートは任せてください!!

栗田 僕はいつでも葵さん推しです

茉莉 大切なお店のメンバーだしね

凛子 私は元から友人だしねぇ~大樹もいい

大樹 当たり前だろ。できる限りのことはします。

吉田 ありがとう、ございます。