富士と大樹のオムライス対決当日
富士 さぁ、僕のオムライスを食ってくれ!!
澄蓮 なんか凄い……ですね
柚貴 そう…だね。
凛子 いいじゃない~~派手で!!映えよ、映え!!
葵 確かに、映えではあるかもだけど……
茉莉 大切なのは味でしょ?味。
大樹 なんで茉莉まで食ってるんだ?
お前審査員はずれたんじゃないのか?
凛子 いいじゃない~茉莉ちゃんだってお店のスタッフなんだし、
賄い替わりってことで。
大樹 まぁ良いけど。じゃ、俺の方が少なめでいいな?
茉莉 そうね。私の答えは変わらないし、少なめでいいよ。
大樹 了解!!
犬塚 おい、その茉莉ちゃんの代わりが、俺でいいのか?
凛子 犬塚くんにはカクテルのレシピを頼んでるからね~
その面での意見も欲しいなって思って
犬塚 なるほど、わかった。
柚貴 犬塚さん、よろしくね!!
犬塚 柚さん!!はい!!頑張ります!!!
茉莉 何を頑張るのよ……
凛子 じゃ、まずは富士くんのオムライスから審査しましょうか?
このオムライスは名前とかあるの?
富士 はい!!名付けて、富士さんオムライス!!
茉莉 まんまじゃない
富士 勿論、僕が作ったからとか、見た目通り富士山のような
山盛りのオムライスだから!!というわけではないぞ!!
まずは食べて確かめてくれ!!
柚貴 あれ?コレ中身がチャーハンじゃないですか?
凛子 私のはカレー味のライスね
葵 サフランライス?
澄蓮 私のは普通のケチャップライスですね
犬塚 うわっ、これグラタンか!!
富士 そう!!5つのライスの味のオムライスなのだ!!
これは女性スタッフが5人からスタートするというのと、
富士山は5合目から登るだろう?この二つの意味をかけてるんだ!!
本当はしたから積み重ねていきたかったんだが、味が混ざってしまうので、
縦に5分割にした一品んだ!!
茉莉 バカじゃない?
凛子 私は面白いと思うわよ~
澄蓮 確かにインパクトは強いとは思いますけど…
富士 そうだろ?今SNSでは山盛りメニューが流行ってるからね!!
それに合わせたコンセプトメニューさ!!
これならきっとお客さんはいっぱいSNSに写真を上げてくれるだろ?
そうしたら話題になること間違いなし!!どうだい?僕の料理は
凛子 はいはい。感想は大樹のオムライスを食べてからねぇ~
大樹~準備は?
大樹 あいよ~今出すよ。ほい、お待ちどうさま!!
富士 うん?普通の……より平べったいオムライスに店のロゴの焼き印?
大樹 あぁ。アイドルカフェってオムライスの上にケチャップでなんか書くんだろう?
だからなるべく書きやすいように平べったいオムライスにした
凛子 あら~大樹も勉強してるのね~
大樹 やる以上は良いもの出さないといけないからな。
犬塚 ん?これ真ん中に行くほどに味が変わってるのか?
大樹 あぁ、上に落書きするならケチャップの味が強くなっちまうからな。
舌が飽きないように、真ん中はすこしスパイスを強めにしてる。
後は樹で出してた時と基本は同じだ
富士 なるほど。流石に考えてありますね。しかし、それではインパクト不足は否めない。
流行を作るという意味では難しいですね!!
凛子 さて、ではジャッジしていきましょう!!
さぁ、どっちのオムライスがよかったかしら?
全員、大樹のオムライスを指さす
富士 な、なぜ!!
茉莉 そりゃそうでしょ…
富士 しっかりと流行に合わせたのに
犬塚 まず味が強すぎて、胸焼けする
葵 こんな大きいとサーブができないのよね~
柚貴 この量を食べきるのはちょっとね~
凛子 原価率が高い!!
澄蓮 アイドルカフェはお客様が私たちに会いに来てくれるお店なんです。
だから、ご飯がメインじゃないんです。
富士 なっ!!なんだって!!
犬塚 それに比べて大樹のは、味が落ち着いてるから他にも食べられるしな
葵 ケチャップで絵を書くの楽でいいわね、コレ
柚貴 見た目より量が少ないから女の子でも食べれそうだしね
凛子 お皿も今使ってるので流用できるから経費も浮くしね~
澄蓮 そして、このロゴデザインは、みんなで決めたデザインなんです。
大きな樹を中心に色々な果物や花が成る……
私達にとって『樹』がそうだったように、
このお店がそうなれる様にっていう、願いが込められた印なんです。
茉莉 残念だったわね
富士 何故だ!!完璧にSNSに対応した一品だったのに!!!
大樹 なぁ、そのSNSってのは誰なんだ?
富士 誰かって、そんなの特定の人を指すわけでは……
大樹 多分なんだけど、だからじゃないか?
富士 ……え?どういう
大樹 料理ってのは『誰か』のために作るもんだろ?
でも君の料理は、誰のための料理か分らない……どこか冷めた感がするんだよ。
「料理ってのは、食ってくれる『誰か』を思い浮かべて作れば、
自ずとうまいモノができるもんだ。」
ウチの親父の受け売りだけどな。
そういう最初の情熱、みたいなのを思い出せば、
きっと美味い料理が作れるんじゃないかな?
富士 ……お兄さん
凛子 料理も気持ちも、アツアツが一番ってこと~カッコいい~
大樹 茶化すな
富士 ………『誰か』のための料理
茉莉 富士
富士 茉莉……
茉莉 あんたは色んなこと考えてると思う。確かに売り上げとかも大事だけどさ、
一番大切なのは、お客さんが満足してくれる事。だと思うんだよね。
そのために、店のメンバー全員で頑張る。
みんながあんたのことを理解してくれない、っていう前に、
あんたがみんなのことを理解しようとしてた?
富士 それは……
茉莉 昔、あんたが作ってくれたご飯、今みたいに上手くなかったけど、
私の為に一生懸命作ってくれたのが伝わってきて、すごく美味しかった。
富士 茉莉に作った料理……あっ!!
茉莉 あの時は普通のオムライスだったけど、凄く美味しくて、
でも、なんだか悔しくてつい、
『お兄ちゃんのオムライスの方が美味しい』って言っちゃったの覚えてる?
富士 あったな。その後、悔しくてこの店にオムライスを食いに来たんだっけ
茉莉 そう。そうしたらあんた『いつかこれより美味いオムライスを作る』
って言い出して……
何かあるたびにオムライス作ってくれたっけ
富士 そう、だったな。
茉莉 あの時のオムライスは、この、誰の為か分らないヤツよりずっと美味しかった。
富士 ……
茉莉 あの頃の気持ちとかを思い出して、また一からやり直したら、
きっと今より美味しいものができると思う。だから、頑張りなよ
富士 ま、茉莉ちゃん~~お前、俺の事そんな風に……茉莉ちゃん~~!!!!ぐぇぇ~~
茉莉 調子に乗って抱き着こうとしない。
富士 そ、そんなぁ~
茉莉 早く大将に謝って、店に戻りな。
凛子 ちょっと待った!!
茉莉 ……え?
凛子 富士君はもう、お店辞めちゃったんでしょ?
富士 えぇ……まぁ。
凛子 じゃあ、ウチで働いてみない?
茉莉 えぇぇぇぇ!!!ちょっ!!ちょっと、どういうこと!!凛姉ぇ!!!
凛子 いや~キッチンが大樹だけだと大変でしょ?
だから調度キッチンメンバーを増やそうと思ってたのよ~
茉莉 だからって
富士 やります!!
茉莉 ちょっと!!
凛子 オムライスは確かに大樹の方が美味しかったけど、
SNSをぼく意識したメニューは重要だし
一つ一つの味自体は良かったしね!!
富士くんも初心に帰るなら、キッカケになったお店で。って方がいいんじゃない?
大樹のオムライスを超えるんでしょ?
富士 お世話になります!!
茉莉 こら、調子乗るな!!
凛子 大樹もどうせキッチンメンバー増やすなら、
競争相手が居た方が張り合いあるでしょ?
大樹 どうせ嫌だ、って言っても決定事項なんだろう?オーナーの仰るとおりに
凛子 さっすが大樹~
茉莉 ちょっと兄貴!!
富士 お義兄さん。俺にお義兄さんの……この店の味を学ばせてください!!
お願いします!!
大樹 俺が教えることなんてあまり無いと思うけど、よろしく
富士 茉莉。俺、もう一度この店で、がんばってみるよ。
そしてもう一度……お前のことを振り向かせてみせる。
茉莉 嫌。
富士 そ、そんなぁ~~
澄蓮 えっと、もう一度ってことは……
富士 あぁ、茉莉ちゃんは言ってなかったのか。
俺、茉莉ちゃんとは以前付き合ってたんだ。
柚貴 え?
犬塚 マジか
凛子 やっぱり~
葵 でしょうね
富士 ということで、よろしくお願いします!!お義兄さん
大樹 ……やっぱり無しって事に……
凛子 ダメ~~もう採用しちゃったもん
茉莉 もう、勝手にして!!